《答案Answer》── 許 哲睿 人生初の個展
キュレーター: 姜 麗華(国立台湾芸術大学 共通教育センター 専任教授/パリ第1大学 造形芸術博士)
会場: 基隆美術館 M02・M03(台湾六大直轄市の一つ・基隆市中正区信一路181号)
会期: 2025年6月17日 (火) 〜 7月6日 (日) 火曜〜日曜 09:00–17:00 | 入場無料
オープニング: 2025年6月21日 (土) 14:00 〈夏至〉
アーティストトーク: 2025年6月28日 (土) 14:00
対談者: 姚 瑞中(国立台北芸術大学・国立台湾師範大学 美術学科 兼任教授)
特別感謝:台湾大学写真研究社/台湾写真博物館文化学会/台湾大学タロット研究社/韓門武集/和敬塾設計― 創作の道のりでの啓蒙とご指導に深く感謝申し上げます。
M02展示室:《答案 Answer》(2024)
M02展示室:《答案 Answer》(2024)
M03展示室:《答案 Answer》(2025)、《瘟疫醫生 Plague Doctor》日記とタロット、《立場 Stance》 八極拳映像
M03展示室:《答案 Answer》(2025)、《瘟疫醫生 Plague Doctor》日記とタロット、《立場 Stance》 八極拳映像
M02展示室 入口階段:《試験王の肖像》
M02展示室 入口階段:《試験王の肖像》
M02展示室:《答案 Answer》(2025)―「113年歴史分科試験」× 白色テロ(戦後の台湾で起きた政治弾圧。反体制的とされた人々が逮捕・処刑された時代。)
M02展示室:《答案 Answer》(2025)―「113年歴史分科試験」× 白色テロ(戦後の台湾で起きた政治弾圧。反体制的とされた人々が逮捕・処刑された時代。)
展示ビジュアルテーマ:注音記号・甲乙本の生字帳(漢字練習帳)をモチーフに構成
展示ビジュアルテーマ:注音記号・甲乙本の生字帳(漢字練習帳)をモチーフに構成
M02展示室:《答案 Answer》(2024)
M02展示室:《答案 Answer》(2024)
M02展示室:《答案 Answer》(2024)
M02展示室:《答案 Answer》(2024)
M03展示室 入口階段:《瘟疫醫生の肖像》
M03展示室 入口階段:《瘟疫醫生の肖像》
M03展示室:《瘟疫醫生》AIタロットカード
M03展示室:《瘟疫醫生》AIタロットカード
展示風景:許 哲睿による設営の様子
展示風景:許 哲睿による設営の様子
M03展示室:《瘟疫醫生》3年間のInstagram日記
M03展示室:《瘟疫醫生》3年間のInstagram日記
M03展示室:学力試験 作文用紙 署名ノート
M03展示室:学力試験 作文用紙 署名ノート
M03展示室:《立場 Stance》、《乖寶寶 Good Boy》
M03展示室:《立場 Stance》、《乖寶寶 Good Boy》
M03展示室:《答案 Answer》(2025)
M03展示室:《答案 Answer》(2025)
📸展示写真/設営写真 謝辞: 彭 菘瑋(台湾大学写真研究社 シニアアドバイザー)
M02・M03 両展示室 出品一覧作品
(タイトルをクリックして詳細ページへ移動):
《答案 Answer》
4×5インチ大型モノクロフィルムによるセルフポートレート&パフォーマンス作品 46点
《立場 Stance》
八極拳パフォーマンス映像
《瘟疫醫生 Plague Doctor》
過去3年間のInstagram画像日記1,092枚+AI生成タロットカード22枚
展覧概要 文:姜 麗華 教授
108カリキュラム改革第1期生という「実験台」としての自身の立場から、許 哲睿は4×5モノクロフィルムによるセルフポートレート《答案》シリーズを制作した。
彼は「思想国術」と名付けた独自の構えを取り、仏教の明王の表情を組み合わせる。そして胸には各科目の試験問題を書き込み、「答案」はあえて背中に掲げる。それは、答えを求めても理解に至らない学習体験——テストが終われば知識(答案)は「後ろ」に捨て去られる——を示唆する。
幼い頃から「良い学生であれ」と教えられ、満点という王冠を追い求めてきた私たちは、本当に「正しい道」を歩めるのか。それとも紙上(答案用紙)で武術を語るだけなのか——本展は、そうした問いを身体と写真で可視化する試みである。

台湾国防部(防総省)傘下の漢聲(ハンシェン)ラジオ放送局によるインタビューに心より感謝申し上げます。
司会の林 鈺婷さん、侯 信恩さん、そしてプロデューサーの楊 心怡さん、ありがとうございました。
映像時間:1時間4分40秒(中国語インタビュー)、元の投稿はこちら(Facebookリンク)

20250621開幕分享會,第一排左起: 臺灣藝術大學張國治教授、策展人姜麗華教授、 基隆市文化觀光局江亭玫局長, 藝術家許哲睿、新北市傳統音樂發展協會許順重理事長。
2025年6月21日 オープニング・シェア会より
第一列 左から:
国立台湾芸術大学 張 國治 教授、キュレーター 姜 麗華 教授、
基隆市文化観光局 局長 江 亭玫 氏、
アーティスト 許 哲睿、新北市伝統音楽発展協会 理事長 許 順重 氏 
IG動画(2分58秒)を見る

20250628姜麗華教授、姚瑞中教授、許哲睿三人座談會

 2025年6月28日 座談会
登壇者: 姜 麗華 教授、姚 瑞中 教授、許 哲睿
IG動画(56秒)を見る
 

許 哲睿《立場 Stance》
 縦型4K映像(2分50秒)|演武:大八極拳

《答案 Answer》展示風景映像
 所要時間:1分40秒
会期3週間での来場者数:約5,000人

「子どもの頃から“いい生徒”として真面目に勉強するよう求められてきた。けれども、誰も“自分の声”の出し方は教えてくれなかった。」―― 試験機器番号:10830177
108課綱教育改革の第1期生=“白鼠(モルモット)”として、許 哲睿は独自の〈思想国術〉パフォーマンスを創出した。台湾特有の大学入試「学測」「分科測驗」の過去問――TSMC、三民主義、死刑存廃、注音符号など――を身体に刻みつけ、さらに国民投票や国歌といった「未来の問い」を“思想実験”として提示する。密教の明王の怒りの形相と、眼鏡を光らせて“試験マシン”に開眼を与える演出を重ね、4 × 5 インチ大型モノクロフィルムで等身大セルフポートレートを撮影。寓話を書き添え、「わかったつもり」で終わる受験勉強が人生に刻む傷痕を問う。
失恋の痛手で泣きながら創作を始めた許は、家族・恋人・教師・友人の前で自分を卑下し 他人の期待を満たすことばかりを優先してきた自分を省みた。シリーズ作品は〈個性の迎合〉から〈人性の服従〉へ遡行し、標準解答を追う → 疑い/問い → 自らの答えへと至る成長のプロセスを、世代横断的な経験として映し出す。
シニシズムが漂う硬直した教育環境では、高得点=試験官の思考の忖度であり、「自分の声」は失われる。広義の“試験”は人生の至る所に潜み、幼少期の親同士の比較、就職・昇進、健康診断、さらには 4年ごとの選挙さえ「巨大な知力テスト」と揶揄される。
受験問題と国術(武術)を合わせ〈文武両道〉を掲げても、学びも鍛錬も 国家への奉仕に囚われては脳も心も自由にならない。夜更かしで腰を痛めながら問題集を解く学生時代、許は教室でストレッチを繰り返した。試験も武術も「日々の鍛錬」で知識(姿勢)を骨身に刻む行為だが、今や成績や順位だけが目的――「試験が終われば知識はすべて先生に返す」のだ。
初個展を準備していた頃、許 哲睿は不思議な夢を見た――
学校がまるで動物園となり、生徒たちはオウムのように先生の言葉をただ繰り返す。ようやく“新しい世界”へ飛び立てたと思った矢先、そこでも一枚また一枚と張り巡らされた〈網〉――すなわち SNS に絡め取られていた。こうして、タロットカードと日記を結合したシリーズ《瘟疫醫生 Plague Doctor》が誕生する。
大学入試を終えた三年前、人生の重心を失い精神状態も不安定だった許は、曜日さえ忘れ、自傷を含むのか判然としない傷痕がいつの間にか身体に増えていることに気づくこともしばしばだった。長年自分を抑え込んできたため、感情を解放する術も失っていた。彼がInstagramに投稿した最初の映像日記には、こう綴られている――「今日は少し前進した。涙を五滴流せた。身支度してバイトに行こう!」
その後三年間でInstagram日記は計1,092篇に達し、許はそれらを四半期(3ヶ月)ごとに1枚の紙にレイアウトして展示している。日記の集合写真では、許本人以外の顔を金色のステッカーで覆った。これはプライバシー保護だけでなく、孤独と人間関係の「ノード」を象徴する。著名人や友人たちの存在を取り払ったとき、「私は誰か?」という問いが浮かび上がるのだ。
高校2年時、パンデミックでオンライン授業に切り替わった際、普段は賑やかに語らう友人たちからの連絡は途絶えた。その一方で、あるクラスメイトとはメッセージアプリで深い対話が生まれた。しかし登校が再開されると、オンラインで築いた阿吽の呼吸は消え去っていた。デジタルアイデンティティと現実は別物だと痛感する。人はそれぞれの「仮面」をまとい、ネット上には輝かしい断片だけを差し出す。未来への不安から、許は夜中に悪夢で目覚めてはタロットを一枚引き、その意味を探った。
許はさらに AI を用いて独自のタロットをデザイン。カードの中の自分は瘟疫医師のマスクを被り、SNSの視線を遮断しながら、終わりなきパンデミックの輪廻で自らの声を探し求める。最終的に、四半期ごとの日記をそれぞれ 一枚のタロットの物語と結び付けた。
「こうあるべきだ」と教育され、「ネットでどの自分を見せるか」を自主的に選んでも、外からの期待と内なる自己検閲という重圧は消えない。許は《答案》《瘟疫醫生》などを同時に展示し、三週間の会期中は毎日会場に立ち、来場者と対話しながら世代を超えた物語に耳を傾けた。
朱 家樂
朱 家樂
梁 皓俊
梁 皓俊
吳 昇澔
吳 昇澔
蔡 睿宇
蔡 睿宇
許 哲睿
許 哲睿
(左) 鍾 大方
(左) 鍾 大方
展示準備時間は10時間です。
展示準備時間は10時間です。

2025年6月16日 展示設営日、照明の設置にご協力いただいた台北芸術大学キュレーション研究会の蔡睿宇さん、および設営チームの皆様に心より感謝申し上げます:台湾大学写真部 技術指導講師 楊鎮豪・シニアアドバイザー 彭菘瑋・メンテナンス部長 朱家樂・暗室部長 梁皓俊・メンテナンス部 呉昇澔、Instagram投稿はこちらへ。

2025年7月6日 撤収日、撤収作業にご協力いただいた皆様に深く感謝いたします:台湾大学写真部 技術指導講師 楊鎮豪・メンテナンス部 許信澤、成功大学写真研究会 会長 陳冠廷、そして友人の 左伃恩 さん、940 さん。Instagram投稿はこちらへ。

許哲睿基隆美術館個展海報-1
許哲睿基隆美術館個展海報-1
許哲睿基隆美術館個展海報-2
許哲睿基隆美術館個展海報-2
許哲睿基隆美術館個展海報-3
許哲睿基隆美術館個展海報-3
《答案Answer》── 許 哲睿 人生初の個展|基隆美術館
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心より御礼申し上げます。
初めての個展に際し、ご多忙のところ丸一日を割いてご来場くださった先生方、ご友人、ご観覧の皆様に深く感動いたしました。
本展の実現にあたり、ご支援・ご期待・ご助言を賜り、さらには展示空間の可能性について建設的な議論を重ねてくださったことに、厚く御礼申し上げます。また、SNSでのシェアや温かなメッセージで励ましてくださった多くの友人にも感謝いたします。
とりわけ、基隆市文化観光局 局長 江 亭玫 様、キュレーター 姜 麗華 教授、対談者 姚 瑞中 教授には格別のご支援を賜り、このご縁が結実いたしましたこと、心より御礼申し上げます。
諸先輩アーティストのご臨席とご指導に、若輩ながら衷心より感謝申し上げます。
親しい友人の皆様と久々に語らい、喜びを分かち合えたことも大きな幸せでした。
三週間の会期は瞬く間に過ぎ去りましたが、その感動は永遠に胸に刻まれています。21歳の私にとって、これは人生の新たな章の始まりです。次の機会にお目にかかれる日を、心より楽しみにしております。
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